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よりみち

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Story.06
小説「シェリーの記憶」連載を終えて

  • 「ウィスキーを題材にしたミステリを連載して頂けないでしょうか?」
     そんな無茶なお願いを『りらく』さんに提案したのは2016年のことでした。元々、ウィスキーが好きだったわたしはそれをモチーフにした本格ミステリを書き溜めていました。しかし、当時は朝ドラの『マッサン』の余韻が残っていましたが、今のような空前絶後のウィスキーブームではありませんでした。また、前代未聞のジャンルのため、なかなか発表の場を頂戴できず、悶々としていたのを今でもはっきりと憶えています。
     やっぱり駄目なのかなあ、と諦めかけていたとき、以前に拙作を『りらく図書室』で紹介してくださった方の顔が思い浮かびました。タウン誌で小説を、しかも、ウィスキーミステリを連載するなんて無理だろう、と思いながらも、一縷の望みをかけて、『シェリーの記憶』を『りらく』さんに持ち込みました。
     『りらく』さんの皆さんはとても好意的に受け取ってくださいましたが、諸々の事情でなかなか実現できず、時間だけが経過していきました。あまりにも無謀すぎた、と思い、わたし自身、ほとんど忘れかけていましたが、2018年の頭に、「連載が決まりました」という思いもかけない電話を頂戴しました。
     嬉しさはもちろんありましたが、果たして『りらく』さんの読者さんに楽しんで頂けるだろうか、という不安が頭をよぎったのも事実です。重ね重ねになりますが、ウィスキーをモチーフにしたミステリなんて今までにありませんでしたから。しかし、せっかくの好機を逃すわけにはいかない、と思い、以前に書いた原稿を大幅に改稿し、『りらく』さんにお渡ししました。
     タウン誌ですので、文章だけで紙面を埋めるのはよくないと思い、解説をバー・アンディさんの安藤さんに頼み、写真も『りらく』さんのスタッフの方に撮って頂きました。お陰様で素晴らしい紙面になり、昨年の終わりくらいからわたしの耳にも、「シェリーの記憶を読んでいます」という声が届くようになりました。一番嬉しかったのは、プライヴェートでアンディさんで飲んでいるとき、上品なご婦人から直接感想を頂いたことでしょうか。物書きになって今年で6年目になりますが、あのときほど、嬉しかったことはありません。
     お陰様で『シェリーの記憶』をきちんと完結させることができました。これも読者の皆様のご支援のお陰です。突然小説の連載が始まり、戸惑った方も多かったと思います。それでも、暖かく受け入れてくださり、応援してくださった皆様には感謝の言葉しかありません。本当にありがとうございました。
     今号で『シェリーの記憶』は幕を閉じます。しかし、また皆様と『シェリー』にてお会いできることを祈っております。約一年間、どうもありがとうございました。

    三沢陽一